月島の日記

無理になってきた人

地図にないところ

レンタカーで起き抜けの仙台市を発って三陸自動車道をひた走ると、石巻ICまではそう長くかからなかった。インターチェンジ下の小規模な街から山道に入り、そこを抜ければ女川湾に出る。助手席の友人と二人で割り勘したレンタカーのナビは、山道のマッピングがうまくいっていなかった。レンタル代をケチりすぎたなと思った。あれは、硯上山と石投山に挟まれた道だったろうか。その酷道から解放されると近くにコンビニエンスストアがあったので、そこで友人に運転を代わった。
「お前、安全運転すぎなんだよ。教習所みたいだ」
「そうかな。教習所嫌いだったよ」
「俺の運転はハリウッドだぜ」
そう言って彼はアクセルを強く踏んでコンビニを飛び出した。海岸線に差し掛かると右手には女川湾の反射する太陽光で黒く潰れた友人の横顔が見えた。彼は運転席のスイッチをいじって車内全部の窓をあけた。ものすごい風が車内に吹き込む。今何キロ出ているんだろう。こちらからはスピードメータが確認できない。カーナビは道なき道を走っていて、それが震災前の、今では意味を為さない地図だとすぐに分かった。業者が更新をサボったのだろう。僕ら二人はハイになっていて、二人ともヘラヘラしていた。ねえ、と僕が彼に話しかける。
「ねえ、今日はどこまでも行ける気がする」
「そう思う」
「でも十分だ、このまま死んでもいいかなって思ってる。ハンドルを右に切ろう。海にダイブしよう」
「知らねえ」
鳴り止まない風の中で彼は、そんなふうに運転席で絶叫した。そうだねと助手席の僕は思った。海と葉っぱと舗装道路とが日差しのなかに置かれ、ぎらぎらと凄まじい反射をあげた。