月島の日記

無理になってきた人

慰めに失敗した話


久々に研究室に顔を出すと、なんだか同輩の一人が参った様子だった。話しかけても要領を得なかったからほっておいたが、しばらくすると彼の方から僕に話かけてきた。
「第一希望の企業落ちた」
そんなことだろうとは思っていたので、僕は特に驚かなかった。就職活動中だ。こういう時は徹底的に聞き手に回ってやることが一番だ。
「ああ、それは残念だったね。どういう経緯だったわけ?」
彼はその経緯と理不尽さを、主観と感情を込めて僕に話した。僕は適当に相槌を打ちながらそれに反応する。一通り聞き終わったところで
「まあそういうこともあるよ、がんばっていこうぜ」
と言ってやった。内心「これで俺の仕事終わり」と思っていた。僕たちはそういう関係だった。自分が良い企業に就職し、そこで活躍することに何の疑いも持たない彼だった。だがここで、彼がこんなことを言った。
「それにしても、こんなんで俺の人生が決まるのか。こんな紙切れや、電話一本で、短い期間のうちに。どうしようかな」
僕は彼のこの言葉を、ある種自分の過去に対する共感をもって聞いた。僕と彼はこんな関係だけれど、なぜかその時、彼にそんな間違ったことを思ってほしくないと強く感じた。
「ねえ、俺らまだ若いんだ。そんな言い方ってないぜ。俺は明日のことさえ分からないよ、けど何も始まってない気がする。そんなの人生のほんの一部だ。ダメだったら、俺と一緒にダメになろう。フリーターになろう。好きな時に散歩して、何も欲しがらない生き方だってある、知ってるでしょ」
余計なお世話だと思ったが、僕はそう言わずにはいられなかった。彼は困惑と悲哀の間のような表情で
「俺にはそう思えないんだ」
と言った。僕はひたすら「狭いよそれ」と思うばかりだったが、そんなことを彼に言う権利はもちろん無かった。